ホエイプロテインを摂るタイミングを決める前に、まずは「なぜ」ホエイタンパク質を食事に取り入れるべきなのか、あなたの体の中で「どのように」ホエイタンパク質が筋肉の成長を促進してくれるのか、そして「どの」タンパク質源が一番あなたの体に役立つのかを知っておくことが有用です。
ホエイプロテインが身体に与えてくれる利点は、言うまでもなく明らかです。ただ、一般のアスリート、ジム通いをしている方、スポーツ好きの方が食事以外にプラスアルファのタンパク質を日常的に摂る方法は、他にも様々なものがあります。例えば、ホエイタンパク質以外によく利用されているタンパク質源として、カゼイン、卵タンパク質、大豆タンパク質などが挙げられます。
普通、動物素材(例:牛肉、豚肉、魚、さまざまな鳥の肉、卵、牛乳)由来のタンパク質は、より「完璧」な形のタンパク質源だと考えられています。植物を元にしたタンパク質源(例:麻や豆のタンパク質)は有用ですが、人間にとっての必須アミノ酸が1つ以上欠けていることから「不完全」なタンパク質と呼ばれています(48)。動物タンパク質(ホエイなど)は、アミノ酸をしっかり届けてくれるので、完璧です。
私たちにとってありがたいことに、世の中ではタンパク質源をランク付けし、どのタンパク質が最適なのかを判断する格付システムが使われています(このシステムを用いているのは、国連の2つの機関、食糧農業機関と世界保健機関です)。
この格付システムは「タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア」(PDCAAS)と呼ばれています(64)。PDCAASは基本的に、あるタンパク質源から得ることができる必須アミノ酸(EAA)の量と、私たち人間がそれをどれだけ消化吸収できるかに基づいて格付けを行っています。私たちが生物学的に使うことのできないアミノ酸が詰まったタンパク質をいくら摂っても、何の役にも立たないことは明らかですよね。この格付システムで評価しているのは、タンパク質が持つアミノ酸の「バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)」と呼べるものです(13)。
実を言うと、さまざまな形のホエイプロテインがある中で、PDCAASの高い格付けを受けているのはホエイだけではありません。カゼイン、大豆タンパク質、卵タンパク質も、PDCAASの格付システムの中では、100%のレベル(スコア1.0)を満たしています(32)。
したがって、最高の形のホエイプロテインを真の意味で判断するには、さらに深く分析する必要があります。
ホエイ、カゼイン、ソイ。どのプロテイン?
ホエイ、カゼイン、ソイプロテインを比べてみると、どれもPDCAASのスコアが1.0を超えています。しかし、平均してホエイが63〜66g(100g当たり)の必須アミノ酸を供給してくれるのに対し、カゼインは45〜49.3g、大豆タンパク質は49〜62gです。すなわち、ホエイプロテインに含まれている必須アミノ酸の方が多いのです。
続いて、体がこれらの必須アミノ酸を効率的に利用できるかどうかを見てみましょう。それには、正味タンパク質利用率(NPU)という指標を調べます。NPUは、食事で摂取したタンパク質の量と、尿中に排出された窒素原子の量を計測して算出されます。出てくる数値は0から1.0の間で、これが、体内で使われたタンパク質の割合を示します。
研究では、ホエイがタンパク質使用率0.92(92%)というNPUを持ち、カゼイン(76%)、ソイ(61%)はそれには及ばないことがわかりました(32)。こうして、ホエイプロテインは製造過程でより高濃度のタンパク質を含むように作られ、より多量の必須アミノ酸を含んでいるだけではなく、そこから得られるアミノ酸の利用効率も高いということが示されました。
ホエイプロテインのアミノ酸利用効率
驚くべきことに、ホエイプロテインの持つ利点はこれだけにとどまりません。ホエイプロテインの特別なアミノ酸利用能は、私たちの運動後のニーズにも適しているのです。
異なるタンパク質を摂取した際の体の反応を、体内でのアミノ酸の動きを追跡して調べた研究では、ホエイタンパク質がアミノ酸の急速な増加を促進し、運動後に筋肉で起きるタンパク質の分解作用を緩和することがわかりました(7、79)。当然のことながら、タンパク質のバランスを早く整えるほど、筋肉の損失は抑えられ、トレーニング後の筋肉増強は大きくなります。
興味深いことに、ホエイプロテインがアミノ酸の急速な増加を促進してくれる一方、カゼインは7時間という長い時間をかけてゆっくりとアミノ酸を放出します(7)。これが、アスリート向けのホエイプロテイン取栄養ガイドラインで、筋タンパク質合成のためにホエイタンパク質とカゼインの「両方」を、ホエイはワークアウト後に、カゼインは休息・睡眠中に、(食事に加えて別途)使用すべきだと推奨されている理由です(13)。
ホエイプロテインの成分と吸収率に注目
ホエイプロテインには、さまざまな成分のタンパク質が含まれています。
主なタンパク質分子は、β-ラクトグロブリン(50〜55%)とα-ラクトアルブミン(20〜25%)です。β-ラクトグロブリンは分岐鎖アミノ酸(BCAA)の主要な供給源であり、アミノ酸構成はロイシンが多い(約14.5%)ことが知られています(34、61)。ロイシンというアミノ酸は、筋肉でのタンパク質合成を促進する重要因子だということを覚えておいてください。
ホエイプロテインのその他の成分は、血清アルブミン(5〜10%)、グリコマクロペプチド(10〜15%)、ラクトフェリン(1%)などの、さまざまなペプチドとタンパク質です。また、体内の免疫系で使われる抗体タンパク質、イムノグロブリンも10〜15%ほど含まれます(23、28、41)。
この分子群の組み合わせにより、ホエイプロテインにはタンパク質の合成、修復、成長を促進してくれる高濃度の必須アミノ酸が含まれるのです(8、28、66)。また、システイン(抗酸化作用があると予想されています)、イムノグロブリン、成長因子(IGF-1/TGF-1)なども多く含まれているため(48)、他にも様々な利点があります。
吸収率
ホエイを構成する分子群の他に、もう1つ重要な特徴となっているのが、吸収率です。ホエイは素早く消化され、水によく溶けることが知られています。こうした性質は、筋肉でのタンパク質合成促進に役立ちます(7、20)。
また、この吸収の早さはアミノ酸を活用しやすくするのにも役立ちます。ホエイタンパク質は、ワークアウト前後の栄養補給時に頼れるタンパク質源なのです(7、20、37)。
ホエイプロテインの摂取タイミング
運動トレーニング前後のどのタイミングでホエイプロテインを摂取するのが最適なのか。ホエイプロテインの記事を書くなら、このことに触れないわけにはいきません。なぜなら、ホエイタンパク質は速吸収性のタンパク質の摂取源として最適だからです。
タンパク質摂取のガイドラインでは一般的に、無駄のない筋肉を適切に回復、増強、維持できるようにするためには、摂取のタイミングを検討することが重要だと提唱しています(13)。
なぜなら、筋肉内で起きるタンパク質の酸化・分解を抑え、再合成と修復を促進するために、ワークアウト後にはより多くのタンパク質を摂取する必要があると、広く認識されているためです(4、55、60、62、81)。
高い特性と吸収率を誇り、必須アミノ酸の含有量も多いホエイタンパク質は、タンパク質分解・合成の度合いのバランスを整えるのに最適な選択肢です(9、10、24)。
また、ワークアウト後にホエイプロテインを摂取するのは、大きなステーキや鶏むね肉の塊を食べるのよりもずっと魅力的かもしれません。
例えば、私は朝5時半にトレーニングをして、8時に職場に着くまでは朝食を食べません。手軽なプロテインシェイクがなければ、トレーニング後の私の栄養補給と筋肉回復はずっと遅くなってしまうでしょう。それに、朝8時に職場のデスクでステーキを食べたい人なんていませんよね?
ワークアウト後の完璧な栄養補助食品を用意するなら、筋肉でのタンパク質合成を最大限に促進して窒素の良いバランスを確保するため、タンパク質20〜25g(その中に必須アミノ酸を8~12g含む)を摂れるものにすべきだと推奨されています(5、8、51、59、74)。
それに加えて、ワークアウト後2時間以内に摂取すべきだとされています(3、6、22、26、38、46、77、78)
まとめ
この記事ではホエイプロテインがどのように筋肉の成長を促進し、いつ摂取すべきかについて解説してきました。もっとホエイプロテインについて知りたい方は、ホエイプロテイン | コンセントレート?アイソレート?ホエイの効果、副作用や摂取量は?もあわせてご覧ください。