少しでも強くなりたい、1秒でも速く走りたいアスリートの方、また体脂肪率を減らして引き締まった体になりたいと筋トレやダイエットに励む方、そんな人は脂質の摂取をとにかく控え、節制しなければと考えてはいないでしょうか。
ですが脂質の摂取量が少なすぎると、健康を害したり、継続したトレーニングを行うことができず競技力の低下を招いたりしてしまう危険があります。
脂質は3大栄養素のうちの1つで、体にとって重要な役割を果たします。偏った節制をせず、健康的な病気知らずの身体を作っていきましょう。
今回は身体のために積極的に摂るべき脂質、特に必須脂肪酸であるEPA、DHAについて詳しく解説していきます。
脂質、脂肪酸とは
脂質は、生物から単離される水に溶けない物質を総称したものです(1)。タンパク質、炭水化物は1gに対して4kcalですが、脂質は1gに対して9kcalと、3大栄養素の中で最も高いエネルギー源です。エネルギー摂取量を計算する際には、各栄養素が由来する食品の違いを考慮せず、概数として、たんぱく質1g=4kcal、炭水化物1g=4kcal、脂質1g=9kcalです(2)。
脂質は1gあたりのkcalが糖質、タンパク質より高いため避けられがちですが、私たちの体には不可欠な栄養素で、エネルギーとして使われるだけでなく体の細胞膜の原料となります。他にも、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D、E、Kなどの吸収を助ける働きがあります。
脂質の主成分は中性脂肪と呼ばれる物質で、その性状(室温で液体あるいは個体といった違い)と栄養学的な質を決めているのは、中性脂肪の大部分(90%)を占める脂肪酸です。脂肪酸の分類方法はいくつかあり、炭素の鎖の長さで分類した場合、短鎖、中鎖、長鎖脂肪酸に分類されます。
さらに他の分類方法で脂肪酸は、炭素同士の結合方式によって、大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に大別することができます。
飽和脂肪酸は化学式の炭素の結合手が全部水素で満たされているもので、化学的に安定な構造です。主に動物性脂肪など固形の脂質中に多く含まれています(3)。
不飽和脂肪酸は炭素の結合の中で、水素の不足した二重結合と呼ばれるつながり方を部分的に持っているもので、酸素によって過酸化を起こしやすい不安定な構造です。脂肪酸の中には私たちが生体内で作ることができませんが体にとって重要な役割を持つものがあり、この脂肪酸を「必須脂肪酸」と呼びます。必須脂肪酸にはリノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸があります。
必須脂肪酸とは
ω-6脂肪酸(n-6系多価不飽和脂肪酸とも表記)はリノール酸、アラキドン酸が属します。リノール酸は大豆油、ごま油、なたね油などに多く含まれており、アラキドン酸は卵黄、豚レバーなどに多く含まれています。健康な人の推定平均必要量を設定できるデータはなく、日常生活を自由に営んでいる健康な日本人には、n-6 系脂肪酸の欠乏が原因と考えられる皮膚炎等の報告はありません(4、5)。
日常的な食事を行っていればω-6脂肪酸が不足することはないため、積極的に摂取をする必要はないわけです。
次に、ω-3脂肪酸(n-3系多価不飽和脂肪酸とも表記)についてです。ω-3脂肪酸は必須脂肪酸であるα-リノレン酸と、生体内でそれから代謝されてできるイコサペンタエン酸(以下EPAと表記)、ドコサヘキサエン酸(以下DHAと表記)などが属します。主に魚の脂質や一部の植物性脂質(亜麻仁油、えごま油、くるみなど)に含まれています。
30代男性のω-3脂肪酸摂取の目安量は2.1gとなっており、平均摂取量も2.1gを超えています(6)。そのためのω-3脂肪酸自体の摂取量は、平均的な食生活をしていれば不足の心配はいらないでしょう。
しかし、ここで注目していただきたい点があります。
ω-3脂肪酸の中でもEPA および DHA の望ましい摂取量は成人男性、女性ともに合計で1.0g/日となっています。日本人 30~49 歳以上の EPA、 DHA 摂取量の中央値は、0.32 g/日(男性)、0.23 g/日(女性)と、1日に必要量とされる量の半分も摂れていません(7)。統計データからも分かるように、EPA、DHAは意識的に摂取しなければ不足してしまうのです。
ここからは必須脂肪酸のうち、特に不足しがちになるEPA、DHAについて解説していきます。
EPA、DHAの必要量と不足による影響
先述の通り、厚生労働省が推奨しているDHA、EPAの摂取量は1日に合計1.0g(1000mg)です(7)。
かつお(生)であれば可食部100gあたりEPA400mg、DHA970mg
ぶり(生)であれば可食部100gあたりEPA940mg、DHA1700mg
ほっけ(生)であれば可食部100gあたりEPA450mg、DHA530mg
上記の数値より、DHA、EPAの摂取量は1日に合計1.0g摂取するには、かつおは約70g、ぶりは約40g、ほっけ約100g摂取すれば1日の必要量を満たすことができるため、摂取量としてはそれほど大変な量ではないと言えるかもしれません(8)。
しかし食事として摂取する場合、調理をしなければいけないことを忘れてはいけません。EPA、DHAは調理による熱で酸化され分解することが知られていますが、具体的にどれほど減少するかを調べた研究がありましたのでご紹介いたします。
さんまをフライ、魚焼きグリル、フライパン調理し中心温度が75、85、95°Cになるまで加熱後EPA、DHAの含有量を測定したケースです。
中心温度によらず、加熱後のEPA保持率はフライ、魚焼きグリル、フライパン調理、それぞれ 43、77、91%となっています。DHAではそれぞれ48 、75、 99% という結果になります(9)。この研究結果から、魚のEPA、DHAは加熱による分解よりも調理による脂質の流出の影響が大きいことがわかります。
巷で言われているほど、魚を摂取する際は生食にこだわる必要はないということです。加熱による分解が少ないので調理方法(揚げ物や魚焼きグリルは避ける)さえ気をつければ、食事として摂取しやすいようです。
さて、もしω-3脂肪酸が欠乏したら、小児の場合、鱗状皮膚炎、出血性皮膚炎、結節性皮膚炎、または成長障害が見られます(10、11)。
またアレルギー性鼻炎罹患の減少、DHA 摂取量が多い群で骨密度が高いことや 、EPA および DHA 摂取量が多い群で高齢者の認知能の悪化が少ないことが報告されています(12、13、14、15)。
脂質は細胞膜の構成成分として重要な役割を果たしているため、不足すると体の各所に悪影響が起こり、特に肌荒れなどをしやすくなります。十分な量を毎日継続して摂取していくことが重要です。
運動時のパフォーマンスとEPA、DHAの関係
近年、アスリートにも注目されているEPA、DHA。その運動時におけるパフォーマンスについての研究結果が多く出てきていますのでご紹介します。
筋肉がより大きく成長することを促す可能性や、筋肉の修復を助けることで、運動後数時間後から数日後に発生する遅発性筋肉痛を軽減もしくは早期回復を行うことができます。そして血液検査で測定できる炎症反応も減少させる効果もあります(16,17)。
上記の結果より、トレーニング翌日の遅発性筋肉痛を軽減、早期回復させることができるため、今まで筋力トレーニング後に3日の間隔が必要だったものを2日間に減らせる可能性もあり、トレーニング頻度を増やせるかもしれません。
また、血管の弾力性を高める、赤血球の柔軟性を向上させるなどの効果も示唆されており、持久系のアスリートにも有用です。運動時の酸素摂取量が低下し、運動効率が改善することで1万メートル走のタイムが51秒ほど短縮されたという実験データがあります(18)。
酸素摂取量の減少は、運動時におけるカロリー消費のうち筋グリコーゲン使用割合が減り、体脂肪の使用割合が増加したことを示しています。これにより持久走の後半まで筋グリコーゲンを残すことができるため、より速いラストスパートをかけられます。EPA,DHAを十分量摂取することで後半まで、「脚を残す」状態を作り出すことができるのです。
摂取タイミングについて
EPA、DHAはいつ摂取すれば体内に吸収されやすくなるのでしょうか。
近年の時間栄養学において、夕食後にEPA、DHAを摂取するのに比べ、朝食後にEPA、DHAを摂取するほうがより体内に効率的に吸収されることがわかりました。また、EPA、DHAは脂溶性であるためサプリメントとして摂取する場合は食事を摂取後すぐに摂るとより体内への吸収量を増やすことができます。
毎日EPA、DHAを摂取するためのサプリメント
魚を調理する手間や保存期間が短いことを考えると、いくら日本人でも毎日魚を摂取するのは難しいのが現実です。食生活の欧米化でなかなか魚を口にする機会も減ってきていることを考えると、無理なく続けやすいサプリメントで摂取するのが良いのではないでしょうか。
マイプロテインからは高品質なEPA、DHAサプリメントが発売されています。
- オメガ3(フィッシュオイル)
マイプロテインのサイトでは「1日3回、1錠ずつの服用。食事との服用をおすすめします。」と記載されていますが、厚生労働省のEPA、DHA合計の目標量は1000mgです(6)。この商品の場合1カプセルにつきEPA、DHAの合計は300mgとなっており、毎日朝食後に4カプセルずつ摂取するのがおすすめです。 - スーパーオメガ3
マイプロテインのサイトでは「一食につき1錠を毎日3回、食事と一緒に服用ください。」と記載されていますが、この商品の場合は1カプセルにつきEPA、DHAの合計が620mgとなっており、毎日朝食後に2カプセルずつ摂取するのがおすすめです。
またスーパーオメガ3はマイプロテイン独自の技術であるPureMax™により製造されており、環境汚染物質(食物連鎖の高い魚に蓄積する傾向がある、重金属、ダイオキシン、農薬、PCBs)が除去されたことでより安心して摂取することができます。
さらにω-3、ω-6、ω-9という別個のオメガ脂肪酸をまとめて摂れるオメガ 369(フィッシュオイル)もラインナップにあり、必要に応じてさまざまな製品が選べます。
まとめ
必須脂肪酸の中でも特に食事から摂りにくいω-3脂肪酸を意識して摂取することにより、日々健康に生活をできるだけでなく筋肉の成長や疲労軽減、有酸素運動能力の向上を目的として摂取する意義をおわかりいただけたでしょうか。
高カロリーだからといってただ脂質を避けるべきではなく、その質や量、タイミングを意識して摂取することが大切になってきます。