日本ではウコンとして知られてるターメリックに含まれる成分であるクルクミンをご存知でしょうか?クルクミンにはたくさんの驚くべき働きがあることが分かっています。この記事ではそんな大注目のターメリックとクルクミンについて解説していきます。
ターメリック(ウコン)とは何か?
このスパイスについては、すでに探検家マルコ・ポーロによる西暦1290年の書物の中に記載があります。ターメリックやその健康への働きについては歴史を通じてさまざまな書物に記載されてきましたが、1858年から1947年にかけてのイギリスによるインド統治時代、ターメリックはヨーロッパ中に流通したカレー粉の成分として知られるようになりました。
ターメリックはまさに黄金色のスパイスですが、この独特の色は、その成分であるクルクミンによるものです。これを食べ物に付加することによって新鮮さや美味しさを保てるということがわかると、クルクミンの健康面での働きについての調査が行われるようになりました。
クルクミン分子とその派生物(世界的にはクルクミノイドと呼ばれています)は一般的にターメリックの組織のうち2〜5%程度ですが、これは非常に重要な成分です(2)。
ターメリックの種類によってはクルクミンを最大9%含むものもありますが、こうした成分の他、ターメリックには芳香油やオメガ3脂肪酸、たんぱく質や炭水化物なども含まれています(1)。また、植物由来の化合物(フィトケミカル)もさまざまに含まれており、その1つとしては水溶性抗酸化物であるターメロールがあります(3)。
クルクミンについて
クルクミノイド分子は、ポリフェノール、つまり化学的に構成された多数の石炭酸分子です。その構造の違いによって、クルクミンI、II、IIIと区別して呼ばれます。どの類似体が最も協力であるかについては統一した見解は得られていませんが、クルクミンがターメリックの最も強力な成分であるという点については意見が一致しています(4-5)。
実際、この分子が良い影響があるということは、健康や生理学のさまざまな領域で言われています。そうした働きは、抗炎症剤や抗酸化剤としてのものから肝臓などの内臓の健康をサポートする成分までと多種多様です。
クルクミンの強力な抗酸化作用と抗炎症作用は、私たちの体内で行われているさまざまな化学的シグナル伝達やさまざまな領域の細胞発達を助け、それと同時に重要なたんぱく質や成長因子の水準を調節していることが示唆されています。
それでは、それぞれの力について詳しく見てみましょう。
クルクミンの消炎効果
驚くべきことに、クルクミンによる天然の抗炎症力は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のフェニルブタゾンと同等であり、そしてそれは一般的に用いられているイブプロフェンより強いのです(25)。しかも、他の抗炎症剤に見られるような副作用の可能性がありません。
クルクミンの抗炎症作用は、次のようなさまざまな経路を通じて生じていると思われます。
✓ COX2(炎症や痛みの原因となる酵素)誘導の阻害 (26-27)
✓ LOX2 (別の炎症誘発酵素)の阻害 (28-30)
✓ 炎症反応に含まれるサイトカイン(31-36)や転写因子(37-41)の阻害
✓ 一酸化窒素合成酵素(炎症に関与するシグナル伝達分子である一酸化窒素の生成を刺激する酵素)の阻害(42)
また、クルクミンに抗炎症効果があるのは、クルクミンに抗酸化作用があるためだというデータもあります(43−46)。
クルクミンの抗酸化作用
フリーラジカル分子によって引き起こされる脂質細胞膜の過酸化反応、DNAや細胞タンパク質の酸化損傷が、さまざまな病気、さらには老化プロセスに関与しているということがはっきりしています。クルクミンには、こうした酸化ストレスと戦う役割のあることが示唆されています。
酸化損傷に対しては、還元-酸化反応(酸化還元状態)をコントロールすることで健康状態の調節が行われています。簡単に言うと、還元とは電子が増える(分子によって酸化状態が減少する)ことで、酸化はその反対に電子が失われる(酸化状態が増加する)ことです。
クルクミンは複数の方法で細胞の酸化還元状態を調節し、酸化から守ってくれることがわかっています。
たとえば、クルクミンは脂質過酸化を抑制する働きを助け、私たちの細胞膜を保護してくれます(47-51)。
また、クルクミンは私たちの細胞におけるグルタチオンの発現を増大させます(52-56)。グルタチオンはフリーラジカルから体を守るために重要な主要物質の1つで、こうしたラジカルや残存する酸化ストレスを捕まえ、取り除いてくれます。
最後に、クルクミンには鉄と結合する性質があり、それが酸化に対抗する役割を担っている可能性もあります(57)。
このように、酸化ストレスを特徴とする病気にクルクミンとターメリックが効くということがわかってきたのは不思議なことではないのです。実際、ターメリックの水溶性抽出物や脂溶性抽出物には、ビタミンCやビタミンEと同じくらい強力な抗酸化作用があります(58)。
ターメリックとクルクミンの効果や効能
1.傷の治療
民間療法や臨床使用でクルクミンがとくによく処方されるのは、傷の治療です(60)。クルクミンの抗酸化効果は、実験室でのテストと動物モデルを使用したテストの両方で治癒率を向上させているようです(61-63)。クルクミンの抗酸化効果は、過酸化水素などのフリーラジカルによる酸化損傷を抑え、治療中の皮膚やコラーゲン細胞の保護を助けてくれます。
2.関節炎
効用が得られるもう一つの興味深い領域に関節炎の治療があります。これについては、人間を対象とした治験が行われています。たとえば、ある研究(64)では関節リウマチの患者をランダムに2つのグループに分け、一方にはクルクミン(1,200mg/日)を、もう一方には非ステロイド性抗炎症薬のフェニルブタゾン(300mg/日)を2週間投与しました。
この研究の結果、なんとクルクミンを投与されたグループでは抗炎症薬を投与されたグループと同程度に症状の改善が見られ、しかも副作用がなかったのです。こうした症状改善効果には、朝方の関節硬直が大幅に減少した、歩行時間が増大した、関節の腫れが減少したなどが含まれています。
こうした効用は、別の関節炎研究でも、軟骨細胞の研究(65-67)と動物研究(68)の両方で確認されています。
3.癌
クルクミンの治療効果の中でもとくに驚くべきものの1つに、その抗癌作用があります。クルクミンの抗酸化作用と抗炎症作用は、悪性細胞形質転換を引き起こす反応に影響を与えることができるのです(69)。
たとえば、局所薬としてターメリックを舌に塗布することで、口腔癌の病変が10%小さくなったことが示されています(70)。
また、クルクミンの抗癌作用は、癌細胞のアポトーシス(細胞死)につながる反応を促進することでも得られます。そうした効果は、これまでに以下のような癌で見られています。
✓ 頭頸部癌 (71)
✓ 肺癌 (72)
✓ 膵臓癌 (73)
✓ 卵巣癌 (74)
✓ 乳癌 (75)
クルクミンのこうした驚くべき力を考えれば不思議ではないでしょうが、クルクミンは、癌の万能予防薬としての可能性についても研究されています。
4.乾癬(かんせん)
乾癬に罹患している皮膚に局所的にクルクミンを投与し、その効果を見た研究があります。実験では、乾癬のある10名のグループに対し、まず1%のクルクミンアルコールゲルが使用されました。その結果、10名のうち5名では2週間から6週間で皮膚病変の90%が治癒し、残りの5名では8週間後に50%から80%の治癒が見られました。
研究者らはその後、クルクミンゲルと標準的なアルコールゲル基剤で比較を行いました。1ヶ月後、クルクミンのグループでは全員に25%から75%の改善が見られましたが、対照群(標準アルコールゲル)のでは33%に効果がなく、66%では症状が悪化していました。
5.ターメリック/クルクミンのその他の効用について
クルクミンの治療効果は膨大で、とてもこの記事には書ききれません。
その代わり、クルクミンの抗酸化効果や抗炎症効果が示されているその他の領域を一覧に示しておきます。
それには次のようなものがあります。
✓ 急性膵炎誘発の減少および重症度の軽減 (76)
✓ 過敏性腸疾患における抗炎症反応の軽減(77)
✓ 大腸炎(結腸炎)の組織学的徴候の改善 (78)
✓ 胃潰瘍に対する保護 (79)
✓ アレルギーによる肥満細胞活性化の軽減 (80-81)
✓ HIVでのウィルス複製の阻害 (82)
✓ マウスにおけるセロトニンの増加と抑うつ行動の減少 (83)
✓ ヘビ毒中のヒアルロニダーゼ酵素の阻害、ヘビ毒による組織損傷の抑制および生存時間の増加 (84)
ターメリックの摂取用量の目安
さまざまなデータを見てみると、人間を対象とする研究では1日あたり500mgから8,000mgのターメリックが使用されています。ただし、標準的な抽出物では、一般的にそれより少ない量(およそ250mgから5,000mgの範囲)が使用されています。
また、ターメリックとクルクミンの使用期間は3〜4ヶ月が適切であるということがはっきりしています。
まとめ
ターメリックとその主要な有効成分であるクルクミンには数えきれないほどの効果や効用があります。
実験室研究や治療で抗酸化作用や抗炎症作用が確認されているということは、長い歴史のあるこのスパイスの使用は、実際に分子的なメカニズムによって裏づけられるということです。その効果を活用するためにターメリックの摂取量を増やそうと考えるのはごく当然のことなのです。さぁ、あなたの生活にスパイスを!