ALSOK [MUSCLE MEETING 2021/筋肉対談] の動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=HP-V8QAstKI&t=270s
マッチョと言われ始めたあの日
小学校、中学校では陸上競技をやっていました。当時の体格から、今の身体を想像するのは難しいでしょうね。親が一番驚いています。あの頃はいたって普通の体格でした。
ウエイトリフティングを始めた高校生から身体は変わり始めました。卒業する頃には周りから「あいつ、やばいぞ」と言われるくらいのマッチョになっていましたね。遺伝的にも発達しやすかったのかもしれません。
自慢の筋肉は大腿四頭筋(太ももの前側)です。ウエイトリフターの中でも大きいほうではないでしょうか。
スクワットで作り上げた脚ですが、発達具合に左右差が出るのは競技特性から来るようです。ウエイトリフティングの種目のひとつ「クリーン&ジャーク」では、バーベル挙上時に、脚でバランスを取ります。このとき、僕は左脚を後ろに引いて身体を支えます。左脚に重さがかかるため、右脚に比べ若干発達したのだと思います。
トレーニングと休養
有酸素運動は行わず、もっぱら技術練習と筋トレのみです。
筋トレでは、部位別に分割で回すような形はとらず、メニューはその日に決めます。当日の感覚です。前日に行った脚トレで追い込めなかったと感じたら、その日も続けて脚をやります。
昔は分割法でやっていたのですが、どうしても追い込み切れない日が出ていました。なのに、その部位を行うのを来週まで待たねばならないというのが、自分の中ではしっくりこなかったんですね。ならば、連続して行うほうが効率的ではないかと思い、今のスタイルになりました。
【脚の強化】
バックスクワットは、2つのバリエーションで行っています。
ひとつは大腿四頭筋をねらった、膝を少し前に出すスクワット(膝関節主導)。 もうひとつはお尻を引いてヒップドライブを使うスクワット。これは臀筋(お尻)とハムストリングス(太もも裏側)をねらっています(股関節主導)。
[gallery columns="2" size="full" ids="23614,23619"]
スクワットでは、力を入れるタイミング、抜くタイミングの「呼吸」を意識しています。以前、ぎっくり腰になったことがあり、一瞬で体幹を固める重要性を感じたからです。呼吸タイミングをうまく行えるようになってから、扱える重量は伸びました。
--スクワットではボトム時にどうしても腹圧が抜けやすくなります。そのあたりはどのように意識されていますか?確かに抜けてしまいがちです。抜けた瞬間、息が漏れ、声が出てしまうからわかります。そのため、ボトムからの切り返しスピードを上げて回避するよう意識しています。切り返しの瞬間、ウッと強く、素早く、息を吐くことであらためて腹圧をかける人もいるでしょう。ボトムからの切り返し後、粘って立ってくるような時間のかかり方では腹圧維持は難しいと思います。
--バックスクワットでは、大腿四頭筋とハムストリングスに入れる2つのバリエーションで取り組まれているとお話されていました。バーの位置はハイ、ローと変えることはありますか?ハイバーのみです。重さを扱うにはローバーがバイオメカニクス的に、理に適っているのはもちろん知っていますが、あまりこだわっていません。ローバーで行えば、今以上の重量を扱えるでしょう、と周りからは言われていますが(笑)
編集部注)ウエイトリフティングのクリーン&ジャークやスナッチのフォームでは、上半身をまっすぐに保つことが求められる。ローバーでは上半身が前傾になってしまう。【背中の強化】
スクワット以外では、レッグプレスやエクステンション、ラットプルなどのマシンも利用しますし、競技動作を分解しデッドリフト、ハイプルなども行っています。
デッドリフトやハイプルで背中を強化しています。ウエイトリフティングでは、バーベルを背中に乗せるイメージが必要になってきます。背中で引き切るイメージですね。広背筋だけでなく重さによって身体が左右にぶれぬよう、脊柱起立筋も鍛えねばなりません。バーベルを真上に引き上げることが大切なのです。
【胸の強化】
--スクワット、デッドリフトに関する山本選手の記事を目にすることは多いのですが、ベンチプレスへの取り組みはいかがですか?ベンチプレスは、ウエイトリフティングにおいてパフォーマンス低下を招くと言われています。競技では、肩の前までバーベルを引き上げ、いったん肩をロック(固定)しバーベルを安定させます。そこからバーベルを挙上する動作に移りますが、その際、胸筋のテンション(収縮)が強いとストレッチが効きにくくなり、スムーズな挙上動作の妨げになると言われているのです。
とはいえ、身体の背面ばかりを鍛えているため、拮抗する部位の強化も必要かなと思い、ベンチプレスでの大胸筋強化に取り組み始めました。身体の前後バランスを保つためです。当然その分、背面のトレーニングボリュームも上げつつあります。
前編では主にトレーニングについて、お話をうかがいしました。小中学生時代に今の身体はたしかに想像つきませんね。 また、当然のことながら一つひとつのトレーニングが、すべてウエイトリフティングという競技につながっているということを、あらためて感じさせられました。 後編は皆さんの関心が高い、食事やサプリメントについてのお話になります。ぜひお読みください。
公開中の動画はこちらhttps://www.youtube.com/watch?v=T6s7VEpeN2w
山本 俊樹(ヤマモト トシキ)選手プロフィール
数々の日本記録に加え、全日本選手権三連覇を含む六度の制覇、2019年世界選手権5位の実績を誇るウエイトリフティング界のカリスマ。
300キロ超スクワットや他競技パワーリフティング(ジャパンクラシック選手権93kg級)での優勝など、その活躍ぶりからウエイトリフティング五輪での表彰台が期待されている。
競技階級:男子 96kg級 出身大学:日本体育大学
主な成績: 世界選手権大会 出場(2013年・2017年・2018年・2019年) アジア競技大会 出場(2018年) アジア選手権大会 第3位(2017年・2019年) 全日本選手権大会 優勝(2012年・2014年・2016年~2018年・2020年)
大会自己記録(85kg級) スナッチ158kg ジャーク206kg(日本記録) トータル361kg(日本記録)
大会自己記録(89kg級) スナッチ160kg ジャーク208kg(日本記録) トータル368kg(日本記録)
大会自己記録(94kg級) スナッチ165kg(日本記録) ジャーク203kg(日本記録) トータル367kg(日本記録)
大会自己記録(102kg級) スナッチ161kg(日本記録) ジャーク215kg(日本記録) トータル376kg(日本記録)