『PFCバランス』とは何かご存知でしょうか?
ダイエットの際に、やみくもに食事量やカロリーを減らすだけでは、栄養素のバランスが崩れたり、基礎代謝が下がって痩せにくくなったりします。PFCバランスを計算して活用することで、痩せたいと思った時にどの栄養素を何グラム摂ると適切なバランスになるのか知ることができるのです。
今回はPFCバランスの計算方法と、具体的なメニュー、さらにダイエット中の油の選び方についてご紹介します。
この記事で分かること:
PFCバランスとは何か
PFCとは、三大栄養素(三大エネルギー源)であるタンパク質(Protein)・脂質(Fat)・炭水化物(Carbohydrate)のことです。それぞれ英語の頭文字をとってPFCと呼ばれています。
一方、PFCバランスとは、摂取エネルギー量における三大栄養素であるタンパク質・脂質・炭水化物のエネルギーの割合を示したものを指します。
ダイエット中はつい摂取エネルギー(カロリー)が気になりますが、エネルギー量だけを意識すると肝心の中身のバランスが崩れてしまうことがあります。PFCバランスを計算することで、必要な栄養素のバランスと量を知ることが可能です。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準2020』においては、PFCバランスのことを『エネルギー産生栄養素バランス』として記載されています。
1日に必要なカロリーを知ろう
PFCバランスを算出するには、自分が1日に必要なエネルギー(カロリー)を知る必要があり、下記の計算式から算出できます。
推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル
エネルギー必要量を求めるためには、基礎代謝量と身体活動レベルの算出が必要です。計算方法をみていきましょう。
基礎代謝量の計算方法
基礎代謝量の計算方法を解説します。
基礎代謝量とは、じっとしていても消費されるエネルギー量、つまり生きていくために使われる必要最小限のエネルギー量のことです。基礎代謝量の正確な測定には機械が必要ですが、性別や年齢、身長、体重のなどを使って推定する方法があり、計算の方が現実的です。
基礎代謝量を推定する計算式にはさまざまなものがありますが、今回は幅広い世代において比較的適合の度合いが高い国立健康・栄養研究所の計算式をご紹介します。
【基礎代謝量の推定式 (20~74歳向け)】
男性:(0.0481×W+0.0234×H-0.0138×A-0.4235)×1,000/4.186
女性:(0.0481×W+0.0234×H-0.0138×A-0.9708)×1,000/4.186
※ W:体重(kg)、H:身長(cm)、A:年齢(歳)
例えば、25歳男性、身長175㎝、体重65kgの場合の基礎代謝量の計算式は下記の通りです。
基礎代謝量(kcal/日)
=(0.0481×65+0.0234×175-0.0138×25-0.4235)×1,000/4.186
=1542 (※小数点は四捨五入)
上記のとおり、1日あたりの基礎代謝量は1542kcalとなります。
身体活動レベル
続いて、身体活動レベルを求めましょう。
身体を動かしている人とそうでない人では必要なエネルギー量が異なるため、エネルギー量を計算する際には身体活動レベルを考慮します。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準2020』では、身体活動レベルを3つに分けて定めており、下記のグラフのとおりです。
【身体活動レベル別の活動内容】(男女共通)
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | ふつう(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
1.50 (1.40~1.60) |
1.75 (1.60~1.90) |
2.00 (1.90~2.20) |
|
日常生活 |
座位の仕事がほとんど 静かな活動が中心 |
仕事での移動や家事、 買い物、通勤で動く |
立ち仕事あるいは スポーツの習慣あり |
※参照:日本人の食事摂取基準2020
生活の大部分は座っており、静かな活動が中心の人は身体活動レベル(Ⅰ)に該当します。座位中心でも、仕事での移動や家事、歩行によって身体を動かす人は身体活動レベル(Ⅱ)、身体を動かす仕事の人や活発にスポーツをしている人は身体活動レベル(Ⅲ)となります。
必要なカロリーの計算例
推定エネルギー必要量は下記の計算式で求められます。
推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル
【25歳男性、身長175㎝、体重65kg、通勤時に歩く程度の活動量の場合】
基礎代謝量(kcal/日)
=(0.0481×65+0.0234×175-0.0138×25-0.4235)×1,000/4.186
=1542
通勤時に歩く程度のため、身体活動レベルはⅡの1.75
推定エネルギー必要量(kcal/日)=1541.6(kcal/日)×1.75
=2698
※小数点は四捨五入
1日に必要なエネルギー量は2698kcalとなります。
ただし、基礎代謝量と身体活動レベルで求めた1日に必要なエネルギー量は、今の体格において必要なエネルギー量を示しているため、あくまでも目安としましょう。
PFCバランスの計算方法
それでは、PFCバランスの計算方法をみていきましょう。
PFCバランス
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』において、エネルギー産生栄養素バランス、つまりタンパク質・脂質・炭水化物の量が定められています。
【エネルギー産生栄養素バランス(%エネルギー)】(男女共通、妊婦・授乳婦を除く)
年齢 | タンパク質 |
脂質 (飽和脂肪酸) |
炭水化物 |
18~64(歳) | 13~20% |
20~30% (7%以下) |
50~65% |
※参照:日本人の食事摂取基準2020
18歳〜64歳の場合、必要なエネルギー量に対して、タンパク質は13〜20%、脂質は20〜30%、炭水化物は50〜60%エネルギーと定められています。
PFCバランスの計算
PFCバランスは、タンパク質の量を最初に求め、次に脂質、そしてタンパク質と脂質のエネルギー量の残りを炭水化物(アルコールを含む)として定めます。なお、アルコールはエネルギーを産生しますが、必須栄養素ではないため摂取を推奨するものではありません。
先ほどの計算式で求めたエネルギー量2698kcalを活用して、タンパク質・脂質・炭水化物の必要量を求めてみましょう。今回はダイエットを意識して、タンパク質を20%、脂質を30%、炭水化物を50%のPFC比2:3:5として計算します。
タンパク質 :2698kcal×20%=540kcal
脂質 :2698kcal×30%=809kcal
炭水化物 :2698kcal×50%=1349kcal
各栄養素1gあたりが産生するエネルギー量は、タンパク質が4kcal、脂質が9kcal、炭水化物が4kcalと定まっています。そのため、各栄養素の必要量は
タンパク質 :540kcal÷4kcal=135g
脂質 :809kcal÷9kcal=90g
炭水化物 :1349kcal÷4kcal=337g
このように、タンパク質・脂質・炭水化物の量を求めることができます。
なお、健康的に痩せるためには栄養素比率だけでなく内容も大切です。脂質は定められている飽和脂肪酸の量にも注意し、炭水化物においては食物繊維の量を意識しましょう。
PFCバランスの取れた献立&メニュー
それでは、PFCバランスの取れた献立・メニューをご紹介します。
先ほど計算したエネルギー量とタンパク質・脂質・炭水化物量を参考にしてメニューを作成しております。
※栄養成分参照:文部科学省食品成分データベース
エネルギー 2698kcal
タンパク質 135g
脂質 90g
炭水化物 337g
【朝】
麦ご飯(180g)、目玉焼き(1個)、納豆(1パック)、かぼちゃの煮物(1皿)野菜の味噌汁(1杯)、牛乳
エネルギー 871kcal
タンパク質 32.2g
脂質 29.7g
炭水化物 114.3g
ご飯の量は180gを目安にしましょう。野菜の味噌汁にえごま油を加えることで質の良い油を補えます。
【昼】
ご飯(180g)鯖の塩焼き(1切れ)、筑前煮(1皿)、ほうれん草のお浸し(小鉢1杯)、冷奴(1/3丁)、りんご(1/2個)
エネルギー 882kcal
タンパク質 44.6g
脂質 26.1g
炭水化物 113.7g
外食において、定食を選ぶことでPFCバランスが整いやすくなります。魚などのメインにプラスして冷奴などを選びましょう。
【間食】
バナナ(1本)、ヨーグルト(120g)
エネルギー 151kcal
タンパク質 5.3g
脂質 3.7g
炭水化物 26.2g
間食に甘いものを選ぶと脂質が多くなりがちです。バナナなどの果物や乳製品を選んでみましょう。
【夕】
麦ご飯(180g)、豚ヒレ肉のステーキ(200g)、野菜サラダ(1皿)、わかめの味噌汁(1杯)
エネルギー 782kcal
タンパク質 53.1g
脂質 29.1g
炭水化物 71.8g
肉の脂には飽和脂肪酸が多いため、赤身が多い豚ヒレ肉を選びましょう。野菜サラダにはMCTオイルなどを活用します。
【1日合計】
エネルギー 2686kcal
タンパク質 135.2g
脂質 88.6g
炭水化物 326g
ダイエット中の脂質の取り方
ダイエット中におすすめの油を解説します。
脂質は1gあたりのカロリーが9kcalであり、三大栄養素の中でも高カロリーですが、体を動かすエネルギー源になるほか、血管や細胞膜などの構成要素となります。さらに、脂溶性ビタミンと呼ばれるビタミンA、D、E、Kの吸収を助けるはたらきもあります。
身体に嬉しい栄養素が含まれている油であっても、たくさん摂って痩せるわけではないので適量を使うようにしましょう。
MCTオイル
MCTオイルは、消化吸収に優れており、エネルギーになりやすい油です。
通常の植物油と比較して、分解時間が速く体脂肪になりにくい特徴があり、ダイエット中の油としておすすめです。
無味無臭でさらっとした油のため、料理や飲み物に取り入れやすい点が特徴です。ただし、揚げ物など加熱調理用には使えないので、サラダにかけたり、常温の飲み物に混ぜたりして活用しましょう。
えごま油
えごま油は、オメガ3(n-3)系脂肪酸であるα-リノレン酸が豊富に含まれている油です。
α-リノレン酸は、必須脂肪酸と呼ばれ、食事から摂る必要があり、生活習慣が気になる方にとっておすすめの油として注目されています。
えごま油は、MCTオイルと同様に熱に弱いため、加熱調理用の油には使えません。サラダや豆腐にかけて使いましょう。味噌汁などの温かい料理に加えるのは問題ありません。
オリーブオイル
オリーブオイルは、オレイン酸が豊富に含まれています。
オレイン酸は、血液中のLDLコレステロールを下げるはたらきや、腸を刺激して排便を促すはたらきが期待されています。
オリーブオイルは、酸化しにくい油のため、炒め物やソテーなどの調理用油として活用すると良いでしょう。
まとめ
PFCバランスの計算方法と、PFCバランスが整った具体的な献立についてご紹介しました。基礎代謝量などの計算式は一見難しそうに見えますが、電卓で簡単に計算できるので、ぜひご自身の必要エネルギー量を計算してみてください。
ダイエット中は摂取カロリーだけではなく、タンパク質・脂質・炭水化物の摂取バランスにも意識を向けてみましょう。油の質にも配慮してみるといいですね。
ぜひこの記事を参考にして、毎日の食生活やダイエットにお役立て下さい。