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ケトジェニックダイエットとロカボダイエットの違いとは?|メリット&リスクを徹底解説

ケトジェニックダイエットとロカボダイエットの違いとは?|メリット&リスクを徹底解説
Grant Koch
スポーツ栄養学者・有資格のフィジカルコーチ3年 前
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ロカボダイエット(低炭水化物ダイエット)や高脂質ケトジェニックダイエットは、頑固な脂肪を減らしたい人々の間で広まりつつあります。どちらのダイエット法もかなり前から提唱されていますが、両者の違いは何なのでしょうか? 

また、脂肪燃焼するにはどちらの方法が良いのでしょうか?ケトジェニックダイエットもロカボダイエットも高脂質・低炭水化物のダイエット法ですが、効果を出すために従うべきルールはそれぞれ違います。— これがなかなか難しいところです。 

思い込みや噂による情報に惑わされないように、本ブログではこれらの2つのダイエット方法を解き明かし、メリットとデメリットについても解説をします。 

この記事でわかること:

ケトジェニックダイエット vs. ロカボダイエット 

ケトジェニックダイエットはロカボダイエットよりも厳密な三大栄養素の管理が必要強化版ロカボダイエットす。タンパク質を取りすぎるとケトジェニックダイエットは失敗となり、摂取が許される炭水化物量も非常に少ないため栄養管理もより厳密になります。ケトジェニックダイエットを実践する人であれば「ケトスティック(ケトン体量判定紙)」を使って体がケトーシス(ケトジェニックダイエットができる体質)になっているかを判定していることでしょう。— ケトジェニックダイエットは生活密着型のダイエットなのです。 

ロカボダイエットはケトジェニックダイエットよりも炭水化物摂取可能量が多く栄養管理も比較的緩やかです。そのため、果物や野菜など幅広い食材を食べることができます。ロカボダイエットはタンパク質摂取量が多いため、何を食べるかにもよりますが、比較的続けやすいダイエット法です。 

スポーツでのパフォーマンスという点で、これら2つのダイエット法炭水化物を十分に摂取するダイエット法よりも優れているという証拠は乏しいです。持久力が必要なスポーツはどちらかというと脂質をエネルギー源として使いますが、運動強度が上がると炭水化物がエネルギー源として必要となります。7 

最近流行しているのは「トレインロー( train low )」あるいは「リカバーロー( recover low )」という方法です。この方法は、計画的にロカボ(低炭水化物)状態で特定のトレーニングを行う、または炭水化物を補給しないという方法です。これにより脂質をエネルギー源として利用しやすい身体作りをするのです。 

一般に、ロカボ状態でのトレーニングでは筋肉が使うことができるエネルギーが少なく、パフォーマンスをうまく発揮することができません。そのため、炭水化物を十分に摂取している時にこそ全力でトレーニングすることが重要です。質の高いトレーニングをするほど、目標達成は早くなるのです。したがって、ロカボトレーニングと炭水化物を十分に摂取した状態でのトレーニングを組み合わせるのが良いでしょう。 

ケトジェニックダイエットでは、ケトンを順応させ作り出すのに時間がかかるため、上記のような効果を得ることはできません。そのため、競技アスリートには実用的なダイエット法とは言えません。11 

ケトジェニックダイエットとは? 

ケトジェニックダイエット(ケトダイエット)とは高脂質、中タンパク質、低炭水化物のダイエット法です。ケトジェニックダイエット、体内のグルコース貯蔵量が少なくなった際にエネルギー源として使われるケトンと呼ばれる物質を強制的に作り出し ます7 ケトンは脂肪組織(体脂肪)から発現し、血管での「変換プロセス」を経てケトン体になります。7 

一般的なケトジェニックダイエットは脂質70%、タンパク質25%、正味炭水化物5%で行います正味炭水化物は見落とされがちですが、総炭水化物から食物繊維を引いた値で計算することができます。 

これを現実の生活に当てはめると次のようになります。 

例えば、1日の摂取カロリーを2,000キロカロリーとすると、マクロ栄養素の比率は脂質156g70%)、タンパク質125g25%、正味炭水化物25g5%)です。 

では、そもそもなぜケトンが必要なのでしょうか。ケトンはエネルギー価の高い食べ物を摂取していない時に、非常に重要なバックアップとして機能します。 

脳と神経系は体内に豊富に存在する主にグルコースをエネルギー源とします。ケトジェニックダイエットでは少量の炭水化物しか摂取しないので、体内に蓄えられた炭水化物は数日で枯渇します。 

この状態になると身体は脂質を主なエネルギー源とします。しかし、脂質は血液脳関門を通過することができません。(血液脳関門とは特定の物質が血流に乗って脳内に入ることを防ぐバリアーです。)そのため、脳に供給されるエネルギーは少なくなります。もし脳に全くエネルギーが供給されなくなってしまったら、全ての神経系が活動を停止してしまいます2 

しかし、ケトンは簡単に血液脳関門を通過することができ、脳と神経系の第2のエネルギー源となります。2 

詳しくはケトジェニックダイエット | ケトン体とは?なぜ脂肪燃焼を促進すのか?をご覧ください。

ロカボダイエットとは? 

ロカボダイエットはやや曖昧です。ケトジェニックダイエットとは異なり、ロカボダイエットには明確な定義がありません8 

しかし概ね高タンパク(1.4g/kg から2.2g/kg程度)で脂質は程々に摂取し、西洋式の食生活の平均よりも少なく、ケトジェニックダイエットよりは多く炭水化物を摂取するダイエット法であるという認識は一致しています。 

これらの認識から1日あたりに摂取できる炭水化物量は50g から150gの間と考えられます。ロカボダイエットの定義の多くは 体重に対する炭水化物摂取量に基づいています。8 

例えば、体重50kgの女性が1日あたり130gの炭水化物を摂取するのであればそれは中炭水化物または高炭水化物ダイエットです。しかし、体重100kgの男性が同じく1130gの炭水化物を摂取するのであれば、それはロカボダイエットです。 

ロカボダイエットは脂質を最大のエネルギー源として使いますが、タンパク質や炭水化物もある程度エネルギー源として使うことができます。 

空腹感を抑えて、インスリン値を低く保ち、炭水化物が脂肪として蓄えられるのを防ぐことがダイエットには良いと考えられています。 これらのことは大体において体重減少につながります。しかし、ロカボダイエットで実際に起きていることとは異なります。ロカボダイエットでは摂取する食材の選択肢(主にタンパク質と脂質)が狭まるため、自然にカロリー収支がマイナスの状態続けることができるのです。減量の鍵は炭水化物の管理や貯蔵でではなくカロリー収支マイナス状態にあるのです。6 

ケトジェニックダイエットのメリット 

ケトジェニックダイエットのメリットは、ダイエット持続性と効果にあります。ダイエット中に空腹を感じることは最もよくないことですが、ケトジェニックダイエットがうまくいっている人は食欲が抑えられていることや、ダイエット期間が長くなるほど食欲が減っていることに気付いているはずです。これはケトン体とそれが食欲にもたらす効果によるものです。ただし、誰にでもこのような効果が出るわけではありません。 

ケトジェニックダイエットは体内のタンパク質を「節約」するダイエット法です。つまり、タンパク質がエネルギー源として使われることをケトン体によって防ぐのです。ケトジェニックダイエットは筋量増加に最高とは言い難いダイエット法ですが、無駄のない筋肉を維持するためには役立つ方法です。10 

これまでに、ケトジェニックダイエットがスポーツでのパフォーマンスに影響を与えるという具体的な証拠は出ていません。9 

しかし、さしあたっては食欲を我慢せずに食べ、簡単にカロリー収支マイナス状態にするのであれば、減量のためのケトジェニックダイエットは良い選択肢と言えるでしょう。

炭水化物を抑え、健康的な脂質を含むケトジェニックダイエットに適した食材については、こちらをご覧ください。

ロカボダイエットのメリット 

ロカボダイエットでは、カロリーを記録しなくとも簡単にカロリー収支マイナスの状態になることができます。食材を制限することで一般的には食事量が減るということが研究によって明らかになっています。12 食材の選択肢が少ないほど食べる量が減り、それが原料につながるのです。もし無駄のない体を作りたいのであれば、ロカボダイエットは良いダイエット法と言えるでしょう。 

減量が進むほど健康状態も良くなっていきます。これはカロリー収支がマイナスになっていることにより健康状態が改善しているもので、ダイエット自体の効果ではありません。ロカボダイエットは非常に簡単な減量方法であると言えるでしょう。8 

ロカボダイエットは、高タンパクダイエットでもあります。高タンパク食品は食欲を満たし、満腹感を長時間キープすることができます。また、健康やパフォーマンスに影響を与えてしまう望まない筋量減少も防止することができます。 

ケトジェニックダイエットのリスク 

ケトジェニックダイエットは飽和脂肪酸には制限をかけません。すでに体重超過している状態でカロリー過多になるケトジェニックダイエットを行うのであれば、逆に体重増加してしまう可能性もあり、潜在的には健康リスクがあります。 

これらのリスクの一部はカロリー収支をマイナスにすることで対応ができますが、ほとんどの摂取脂質を不飽和脂肪酸から摂取するのは良い考えと言えます51型糖尿病の方はケトジェニックダイエットをするべきではありません。なぜなら医学的な緊急状態である高ケトン状態、ケトアシドーシスになってしまうからです3妊娠中・授乳中の女性にもケトジェニックダイエットはオススメしません3 

これはダイエットを行う時にはよく言われていることです。上記のケトジェニックダイエット避けるべき人々を対象とした臨床試験による調査は、倫理審査承認を取得できないであろうことから、おそらく実施されていませんしません。よって、推奨できる証拠がないので、上記の人々にはケトジェニックダイエットはお勧めできないと言えます。 

野菜から摂取するビタミンやミネラルだけでなく、食物繊維も欠乏するリスク一層高くなります。— これは健康に悪影響を及ぼしかねません。 

ケトジェニックダイエットを実践するのであれば、適応期間を経験することでしょう。適応期間では力が出なかったり、気分が沈んだり、頭がボーっとすることがあります。適応期間は危険な状態ではなく数週間で過ぎますが心づもりはしておいた方がいいでしょう。9 

ロカボダイエットのリスク

前述のように、ロカボダイエットには明確な定義はなく、1日あたり50gから150gの炭水化物を摂取することと考えられます。ロカボダイエットで炭水化物摂取量を最小にしているときは、ケトジェニックダイエットと同様のリスクがあります。なぜなら、炭水化物を制限するということは、果物や野菜も制限するということだからです。8 

ケトジェニックダイエットと同様に不健康な脂質を摂取してしまうという問題もあることでしょう。5 

科学的証拠を基にこのダイエット方が健康か不健康か研究されており、健康的であるとする研究は少ない一方、不健康であると結論づけている研究もあります。研究結果はカロリー収支によって異なると思われます。 

まとめ

ダイエットを成功させるコツは楽しむことです。つまり、ダイエットを継続させて望み通りの結果を得るのです。 

ケトジェニックダイエットもロカボダイエットも一般的に減量を主眼としており、これらのダイエット方がとても上手くいく人も中にはいることでしょう。その他の人は上手くいかずに通常の炭水化物ベースのダイエットに切り替えることでしょう。 

これらのダイエット法の一番の利点の中に食欲を減退させ、食事の欲求を満たすことができる点があります。しかし、これらのダイエット法はスポーツでのパフォーマンスや高強度のエクササイズを行う上では理想的とは言えません。 

健康な人々にとってはいい選択をする限りはどちらのダイエット法も健康に行うことができます。またいずれのダイエット法もよくない選択をすれば不健康なものになってしまうでしょう 

どちらのダイエット法もカロリーを気にせずにとても簡単に行うことができます。これらのダイエット方が正しいかどうか知るためには、まず自分で試してみることです。 

本記事は情報提供および知識向上を意図としたものであり、専門的な医療アドバイスを目的としたものではありません。ご自身の健康に何か懸念がある場合は、健康食品を摂取する前もしくは食習慣を変更する前に、専門医やかかりつけの医療機関にご相談ください。 

本記事は情報提供および知識向上を意図としたものであり、専門的な医療アドバイスを目的としたものではありません。ご自身の健康に何か懸念がある場合は、健康食品を摂取する前もしくは食習慣を変更する前に、専門医やかかりつけの医療機関にご相談ください。

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  2. Evans, M., Cogan, K. E., & Egan, B. (2017). Metabolism of ketone bodies during exercise and training: physiological basis for exogenous supplementation. The Journal of Physiology595(9), 2857–2871. https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/JP273185
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  4. Iacovides, S., & Meiring, R. M. (2018). The effect of a ketogenic diet versus a high-carbohydrate, low-fat diet on sleep, cognition, thyroid function, and cardiovascular health independent of weight loss: study protocol for a randomized controlled trial. Trials19https://trialsjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13063-018-2462-5
  5. Kosinski, C., & Jornayvaz, F. R. (2017). Effects of Ketogenic Diets on Cardiovascular Risk Factors: Evidence from Animal and Human Studies. Nutrients9(5). https://www.mdpi.com/2072-6643/9/5/517
  6. Noto, H., Goto, A., Tsujimoto, T., & Noda, M. (2013). Low-Carbohydrate Diets and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies. PLoS ONE8(1). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0055030
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  12. Gardner, C. D., Trepanowski, J. F., Del Gobbo, L. C., Hauser, M. E., Rigdon, J., Ioannidis, J. P., … & King, A. C. (2018). Effect of low-fat vs low-carbohydrate diet on 12-month weight loss in overweight adults and the association with genotype pattern or insulin secretion: the DIETFITS randomized clinical trial. Jama319(7), 667-679. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29466592/
Grant Koch
スポーツ栄養学者・有資格のフィジカルコーチ
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グラントはスポーツ栄養学者であり、有資格のフィジカルコーチです。タンパク質を中心に研究して、栄養学とフィジカルコーチングで複数の準修士号を取得しました。 10年をはるかに超える期間、フィットネス業界で働き、プロのアスリートたちやスポーツチームだけでなく、スタイルをできるだけ良くしようと頑張っている普通のジム利用者の指導もしてきました。現在では、プロへの指導と、遠隔地の人々へのコーチングを中心におこなっています。 みなさんにおすすめしているやり方を、みずから深く信じていて、20年以上にわたってレジスタンストレーニングとマーシャルアーツを実践しています。空いた時間には、妻と娘と愛犬と一緒に、最新のNetflixのドラマシリーズにハマっています。 グラントのこれまでについて知りたければこちらを、パーソナルトレーニングについて知りたければこちらを、ご覧ください。

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