【湯浅麗歌子選手スペシャルインタビュー|後編】言い切る覚悟。
世界柔術選手権4連覇王者
衝撃の告白!? 憧れは寮母さん
私、本当は寮母さんになりたいんです! 誰にも言ったことないですけど(笑)
寮母さんに憧れています。アスリートの子たちに炊事洗濯をしてあげて、カロリーと栄養を考えたご飯を用意してあげて、お腹いっぱい食べてもらって練習に集中してもらう。一番やりたいのが寮母さんなんです!
もちろん柔術を引退してからの話です(笑)以前は先のことなんてあまり考えていませんでした。でも20代後半に差し掛かり5年後、10年後を考えるようになって…5年後はまだ柔術をやっているでしょうし、じゃあ10年後はどうかな?とか。結婚しているかもしれないし、子どももいるかもしれない。で、考えると寮母さんなんですよ!(きっぱり)そこにたどり着きました。
(質問にはあまり関心なさそうに)寮母さんになると考えたらワクワクしてきて。それまでは最低限暮らせるだけのお金があればいいと思ってましたが、先のこと考えたら貯金しなきゃと考えるようになり…でも練習時間は削れないしどうしようかと悩んでいた時、GRABAKAのオーナーさんから「柔術キッズクラス」インストラクターのお話をいただき、ありがたくお引き受けしました。すでに「柔術一般クラス」の指導をしていましたし、ジムでの指導であれば練習時間を削らなくて済みます。子どもの指導はある意味、大人のクラスより頭を使うので(笑)自分の指導スキルアップにもつながり、よい刺激になっています。
経営となるとまた違ってきますよね。経理とかなにやらで。なので考えていません。
教えることについては、学生時代から「先生になれば」とよく言われました。元々教えるのは好きです。ただ、学校の先生は本当に大変なので無理だなぁと。もしなれるならスポーツ競技を教えるのがいいですねぇ。(ふと気付いたかのように)あっ、だからここ(GRABAKAジム東中野)が一番いいんですよ!だって、ジム経営しなくても指導できますし、練習も好きなだけやらせてもらえるので(笑)
自分のことは自分にしかできない
私、マンガが好きで『あさひなぐ』(薙刀<なぎなた>にかける女子高生の青春ストーリー)に出てきたんですけど…興味があるものがたくさんあると、とりあえずやってみて壁にぶつかると辞めちゃうみたいな。昔からよく器用貧乏って言われたんですけど。でも、何かを見つけられないのならたとえ壁にぶつかってでも、もう少し頑張ってみよう!と思えたんですね。柔道だってもう少し頑張れてたらと、今でも思うことがあります…
…しばし沈黙…
(意を決したかのように)ならば柔術で頑張ってみようと。好きだからやってきたのは確かなんですけど、結果を残せたからこそホントに「好きだった」と今言い切れるのかもしれません。もしかしたら他のことでもよかったのかもしれませんね(しみじみ)
はい、柔術が自分に合っていたのかだってわからないですよね。でも出会ったのが柔術だった…そしていろんな人との出会いや縁の中で「今ここにいる」わけです。その意味では柔術でよかったんだなと思えるんです。
昔は有言実行でありたいと思っていました。でも、それができない時があって「なぜ?」と考えると、最初から乗り気でなかったことがほとんどなんです。そもそも好きでなかった。逆に言えば、好きならばなんとか続けられるはずです。嫌々やってのそこそこの結果より、今結果が出なくても(好きなことを)続けていけばなんとかなるんじゃないかと思えるようになりました。
昔からいつも「何をやるにせよ一番を目指しなさい」と言われてきました。たとえそれがどんな小さなことでも、小学校の書道大会などでも、です。そこで思ったのは、一番を目指すならば嫌々やる類のものではなく好きなもので目指すべきだということでした。
世界チャンピオンになりたい人はたくさんいるわけです。強豪国ブラジルにはそれこそ何人もいるでしょう。その中で「なれたらいいな~」程度では絶対になれないですよね。「なるしかない」なんです。他のことであまり言い切ったりはしないんですが(笑)柔術だけは「世界チャンピオンになる!」と決めていました。だって柔道や水泳を何かのせいにして辞めてしまったんです。柔術だけはやり切ろうと決めていましたし、もしこれがやり切ったうえで結果を残せなかったとしてもそれはそれでいいと。仕事を辞め柔術に専念する環境を作ったのは、そんな理由からです。
何かを始めたり、取り入れたりするのは、やっぱり自分なんだと思います。人から言われてやるというのは、きっかけとしてはありかもしれません。ただ、自分にとって合っているのかどうかは自分自身しかわからないはずです。それを探していくのが大切です。
たとえばダイエットでも、ある運動を「1日10回3セット行うのがよい」と言われていても、はたして本当に効果を実感できているのかを(自分自身に)常に問い掛けるべきですよね。他のことでも同じです。これが最善なのかを考え続ける。スタートが10回できなければ2~3回でもいいわけです。ならばそれを週に数回やるだけなのか、それとも毎日コツコツやってそれが習慣になるのかで結果は違ってきます。どう考えても毎日コツコツのほうがいいですよね。
お料理だって、最初から全部自炊しようとしたら続きません。外食を取り入れつつも、少しずつお料理を始めれば「今日はもう一品ほしいなあ」とか、それでレパートリーを増やせれば料理が苦でなくなります。
やり切っている人って、すべてを伝えがちです。柔術でも最初からすべてをこなすのはムリなので、教えるときはいちおう全部を伝えたうえで、白帯の人はまずこれだけをやってください、靑帯の人はこれとこれ、という具合に個別に指導します。体型だって違います。それぞれに見てあげないと、何が理由でできないのか、本人もわからないはずです。個別に見極めて説明してあげないと特に初心者の人は「向いてないんじゃないか?」とモチベーションを下げがちです。そうじゃないんですよと、しっかり指導してあげたいですね。子どもも同じです。
自分のことは自分にしかできません。遠回りしてでもいいので自分で考え、自分に素直に動けば何かを見つけられると信じています。