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よしもと芸人&フィジーカー にしだっくすスペシャルインタビュー|『オレ流、二刀流』【後編】

前編に引き続き、「にしだっくす」こと西田聖彦(にしだまさひこ)さんへのインタビューとなります。前回は「全国フィジークツアー」最終戦(秋田大会)直前にお話をうかがいましたが、この後編では秋田後の全日程を終えたタイミングで再度、お話をうかがうことができました。

ツアー終了直後の安心感

–ツアーお疲れさまでした。全日程を終えてみて、いかがでしたか?

(しみじみと)きつかったですねえ、やっぱり。もうちょっと上位を狙えるのではないかと思ったのですが、最終戦は5位でした。絞りは過去最高と思えるくらいだったのですが…それでも、ホントすべてが終わったんだと思うと、ホッとしました。もちろん順位にこだわりはありましたけど、4か月半のツアーが終わったんだと思うと安心感のほうが今は強いです。よく乗り切れたなぁといった感じです。

終わった今はとにかく食べまくっていて、あれだけ好きなトレーニングをしばらく休みたいという気持ちにもなって。やっぱり大会に向けて義務感でトレーニングしていたわけで、しばらく解放されたいなあと。

–でも、今日もこれからトレーニングではないんですか(笑)

そうなんです(笑)あれだけ休みたいと思っていたのに…好きなものを食べれるようになったせいか、ガンガンとトレーニングできちゃって。ダブルスプリット(1日2回のトレーニング)やっちゃったりしてます! 何かに追われることがなくなったので、純粋に筋トレを楽しめるようになりました。

食事面では、今日はメロンパン、カレーパン、あとは…あっカップ麺食べましたね(笑)本能のおもむくままです。ただ、大会だけでなく、芸人として筋肉を見せるお仕事をいただいたりもしていますので、そこには気をつけています。体重は大会後3週間で63kgから68kgに増えました。

あと、マイプロさんのプロテインクッキーは常に持っています。減量であろうとなかろうと、たんぱく質補給やカロリー計算に役立つんですね。マクロバランスを考えるうえでも最適です。

珍道中だった無一文全国ゴールドジムヒッチハイクツアー

–さて、2年前のツアーについて聞かせてください。マッチョ二人でヒッチハイクしながら、日本全国のゴールドジムを巡られたとか。

これもまた、つらかったっすねえ。おかざーまんという相棒と2人でプロテイン、寝袋、簡易テントを持って、無一文でツアーを始めました。ひと月、毎日一緒に過ごすというのは友だちとは言えあまりないですよね。

タンクトップ姿のマッチョ二人がヒッチハイクしてもそうそうクルマは止まってくれない。3時間立ちっぱなしということもありました。ヒッチハイクのプラカードを高く掲げてドライバーの目に留まるようにしていたのですが、おかざーまんが高く上げないんですよ。胸元に置いたまま。上げろよ、というと「いやだ。乳酸が溜まる」と。

–まさにマッチョならでは! アイソメトリック運動で無駄なエネルギーは使いたくないと(笑)

ひと月で全68店舗(当時)なので、一日2店舗でも間に合わないわけです。東京近郊で店舗数を稼いで(笑)北は仙台、南は熊本まで回りました。一日2店舗をノルマとしていましたが、1店舗目で疲れちゃって2店舗目では力が出ないんです。

–トレーニングの質を求めても無理でしょう(笑)まずは回ることでしょうから。

いや、ツアー後にフィジーク大会出場を控えていたので、トレーニングをおろそかにはできませんでした。

–無一文。食事や宿泊はどうされたんですか?

食べものは、ヒッチハイクで乗車させてくれた方が、サービスエリアでごちそうしてくれたりとかでしたね。あるときなんか、エリアに止まるごとにごちそうしてくれて、かつ丼、ラーメン、カレー…と無一文なのに、体重が2キロも増えていました(笑)

寝る場所はテント野宿が多かったですねぇ。さいたまの公園で野宿したときなんですが、誰もいないはずなのにサッカーボールを蹴る音が聞こえてくるんです。二人揃って何度公園を見渡してみても誰もおらず…その日以来、野宿が怖くなっちゃって。

–マッチョ二人がおびえながら野宿(笑)

またテントが重くてですね、毎朝じゃんけんでどちらが持つかを決めるんですが、負けるとその日は疲れ果ててしまい、心休まるときがありませんでした。そのうえで当たり前のようにゴールドジムで毎日トレーニングです。それもダブルスプリット。「何やってるんだろう、オレ」って浮かんできちゃうんですが、考え出すとつらすぎるので…ジムを訪問し情報をSNSにアップし、また翌日からツアーを遂行する。これだけをミッションとして、しのいでいました。
あるときは酒をごちそうになりかなり飲んでしまい、途中で地面に這いつくばって吐きまくってしまいました。相棒が背中をさすりながら介抱してくれて、それがありがたくって。泣きながら「ごめんな」と謝り続けたんですよね。そしてそのまま二人で野宿…

–すでに目的を見失っているというか、そもそもの目的が(笑)

ヒッチハイクさせてもらうことも多かったのですが、疲れているのでどうしても車中で眠くなっちゃうんですよね。でも、せっかく乗車させてくれたのに、いきなり居眠りしては失礼だと思い、眠さと闘いながらおしゃべりしていました。こんな思いをしながらも国内のゴールドジム全店舗を巡り、それぞれのジムの良さを見出せた自負はあります。何らかゴールドジムさんからオファーいただけないでしょうかねぇ(笑)

重さに頼らず、自分にとっての正解を見つけたい

–ご自身のトレーニングについて聞かせてください。

重さに頼って、振り回すだけのトレーニングをしないように気をつけています。たとえばハンマーカールで腕トレを行うときなどは、片手で対象筋である二頭に触れながら、しっかりと入っていることを確認しながら行うようにしています。動作だけをしないということです。

–重さは前提でありつつも、ですね。

以前は海外のYouTubeなんかをかなり観ていて、それと同じことをしていましたが、やっぱり違うんですよね。骨格から、レベルから、すべて違うわけで、その人と同じトレーニングをすれば、同じ身体になれるわけではないんですが、そんな時期も経験しました。

そのうち、これってはたして効いているのかどうかわからなくなってきて、そのあたりから自分にあったトレーニングを考え始めるようになりました。初めは真似事からでいいと思うんです。何もわからないわけですから。ただ、常に自問自答しながら、トレーニングを行っていかないといつまで経っても身体は変わらないですよね。そのためには重さを振り回すのではなく、対象筋にしっかりと効かせられているかを意識しながら、自分なりの正解を見つけられるようにしています。

–強度や頻度はいかがですか。

一人で追い込んでいるときは、もう少し行けたんじゃないかと振り返ることが多いんです。これ3セット目だし、もうこれくらいやっているし、といったさじ加減があって、自分で言い訳をあらかじめ用意しているようなところがあるんじゃないかって。そことの闘いですね。メニューとか見ると2時間ぶっ通しでやってる化け物のような人もいて、最初は全然レベルが違うと思ったりしていましたが、そのうち「自分は自分」って思えるようになってきました。トレーニングにおいて満足できることはそれほど多くないのですが、それでもできない自分を受け入れてあげないと疲れちゃいますからね。毎日トレーニングしている自分を褒めてあげることも必要です。

–ボディコンテストに出場したい方に向けて、ひと言ください。

あまり考え過ぎずにまずは出場してみてはどうかなと思います。出てみないとわからないことってたくさんあるんですよ。大会前の減量であったり、マッスルコントロールが必要とされるポージングであったりと、出場して初めてわかる。競技のうえで、身体を作るトレーニングは必要不可欠ですが、同時に食事やポージングといった要素も必要になってきます。大会に出場してみると、このあたりをトータルで考えられるようになるはずです。

日本記録!? フィジーク大会年間16戦出場

–今年のツアーに話を戻します。年間16戦出場というのは日本記録じゃないですか?

いや正式にはわからないのですが、自称フィジーク大会年間出場数の日本記録保持者ということでいきたいと思います(笑)

–もし違うという方がいたら、そこは名乗り出ていただくと(笑)

SNSである程度知ってもらえたせいか、本名で登録を行っているにもかかわらず、ある大会の受付時に「にしだっくすね。過度なパフォーマンスは禁止だからね」とくぎを刺されまして(苦笑)

–ガハハッ、芸名だけでなく芸風まで知られていた! 運営側はついにこの大会に来たか、と。

これが過度なパフォーマンスで注意を受けた6月30日兵庫オープン。以降、品行方正なパフォーマンスを心掛けるきっかけとなった(笑)

ようやく今、ひと段落つけていますが毎日、追われていました。大会が終わったらすぐ次の大会のことを考えなきゃならない。正直きつい時期もあったんですけど、SNSで逐次大会情報をアップしている以上、棄権したり、いい加減な気持ちで臨みたくはなくて。それでも大会の規模やレベルから「今回は決勝難しいかな」とか思ってしまったり…葛藤はありました。

–言うは簡単だけど実際にやり遂げたのは素晴らしいことです。

ありがとうございます。何よりも、全国を巡ったことでいろんな人たちと知り合えたのがうれしいです。選手同士であったり、SNSで知り合った方の善意に支えられたことがなによりありがたかったです。

–来年もツアー?

いや、さすがにそれは(笑)今年各地で応援してくださる方が「また来てください!」とありがたいことに声をかけてくださったので「オレ来年もツアーやるのか?」と(笑)さすがに2年連続は難しいかなと思うので、来年はいくつか選んで出場したいと思っています。特に関西地区での大会には出たいです。関西では、今年あまりよい成績を残せなかったのでリベンジしたいんです。

それと大会とは別に地方を回って運動を普及させたいですねぇ。これから運動を始めたい人や運動初心者の人に、芸人としてその楽しさを感じてもらう活動です。今回のツアーでもいろんな方のご厚意でお宅に泊めていただいたり、地元の郷土料理をごちそうになったりしましたので、その恩返しのような形で。

–いいですね。ツアーを終えて今、感じることはありますか?

選手として身体を仕上げることの難しさをホント、感じました。ちょっと食べただけで、こうなるんだとか。身体の繊細さです。ツアーを始める前には、なんとなく軽い気持ちでどうにかなるさと思ってましたが、いざ始めてみると「なんでオレ、こんなこと始めちゃったんだろう?」と後悔にも似た念に駆られたり(笑)

でもツアー前と後では応援してくれる人の数が、全然増えました! この取材に来る前も、駅の改札ですれ違いざま「にしだっくすさん、頑張ってください」と声をかけられたり。うれしいですね。

そういった意味では応援してくださる方に恩返ししたいんです。お金、時間、諸々ボクに投資してくれているわけで、しばらく音信不通だった人が、わざわざ連絡をくれて応援を買って出てくれたり…なんとしてでも結果で報いたいんです。

二刀流のこれから

–そろそろ最後になります。芸人をやりながらフィジーク競技に出場することをどうとらえていますか?

筋トレやフィジークを通じて、新しい出会いがあったり、仲間と知り合う機会が増えました。またフィットネスや健康ってなんだろうと考えるようにもなりました。芸人をやっているからこそ、発信できるものがあるはずです。お笑いも、フィジークも舞台に立って自分を表現するという点ではまったく同じなんです。

なんでもそうだと思うんですけど、舞台に立つのは一瞬のことですが、そこまでのプロセスには準備が必要です。ボクの場合は、自分の長所を生かすことだけを今は考えています。できないことはできないし、しょせん人の真似事をしても意味がない。自分でなければならないことをやっていきたいんです。だから前面に出ていくようにしているし、行動あるのみなんです。
元々センスがあるわけではないので、自分の武器は何かと考えた時、やっぱりこの身体なんですよね。これを舞台で生かさない手はない。それを今は少しずつできてきていると感じています。もちろんフィジーク競技において、お笑い芸人といったことが評価に反映されるはずはありません。そこは純粋に勝負して結果を出すことで、芸人やってることと併せて評価されたいと思っています。

–とはいえ、芸人として舞台に立ち続けていることは、競技パフォーマンスの部分でアドバンテージではないでしょうか?

それは確かにそうかもしれません。お笑い芸人として、フィジークはボクの領域だというものを確立したいですね(笑)フィジーカーはカッコいいイメージがありますが、ボクは面白くてカッコいい、そして親しみのあるフィジーク芸人になりたいです。そのためには競技で結果を出さなければなりません。

–これだけ若い人を中心にフィジーク競技が注目されてきた中、にしだっくすさんが脚光を浴びるのもそう遠い日のことではないような気がしています。

フィットネス・運動を通して、自分にかかわってくれた人だけでなく、老若男女すべての人を笑顔にしたいんです。芸人にしだっくすが、JBBF大会で上位入賞して世界大会に行く!面白いし、夢があると思いませんか?それを達成したいですね。

トレーニングは、きつくなったらしばらく辞めてもいいと思うんです。好きならばまたやりたくなるはずですから、無理せず自分のペースで続けてみてください。成長速度やトレーニング頻度は人それぞれ。ずっと好きであってほしいんです。素晴らしいものですから。このツアーを終えて、自分がどう変われるのか。それが楽しみですし、新たなる自分との闘いが始まることに今はワクワクしています。

よしもとには、プロ野球のような評価システムがあります。小さな劇場からスタートして、観客の投票やよしもとの審査員による評価により、大きな舞台やテレビへの出演などが約束される階層制です。独立リーグからマイナー、メジャーへと上がっていくようなイメージでしょうか。にしだっくすはフィジーク大会では頂点を極めつつも、お笑いの舞台ではまだまだ上を目指し、もがいているところです。

このギャップの中、常に何かに挑戦し、とどまるところを知らないのが「にしだっくす」です。応援してくれる人が自然発生的に増えるのは、彼の天性の魅力と言えるのでしょう。私自身がこの取材を実現させたかったのは、まさに「にしだっくすを応援したい!」といった気持ちからでした。そう思わせてしまう「何か」が彼にはあるのです。

この「何か」を、にしだっくす自身が具体的にイメージできたときにこそ、彼の筋肉、そして笑顔がお茶の間に届くはずです。それは、そう遠くはないかもしれません。そんなことを感じる、楽しい時間でした。

 

〇にしだっくすさんプロフィール

本名、西田聖彦(にしだまさひこ)。熊本県 宇城市出身、31歳。吉本興業所属の唯一無二のフィットネスコメディアン。
渋谷(無限大ホール、無限大ドーム)、新宿を拠点として、日々お笑いライブに出演する一方、トレーニングにも余念がなく、全国各地のフィジーク大会を転戦する二刀流フィジーカー。
全国ににしだっくすポーズで笑顔を届けたいと語るマチョカワイイ好漢男子のステージに刮目せよ!



森 和哉

森 和哉

フィジカルデザイナー

国立大学法人熊本大学大学院教授システム学修士。効果・効率・魅力的な教え方を実践できる専門家(Instructional Designer)として、特定非営利活動法人日本イーラーニングコンソシアム認定eラーニング・プロフェッショナル資格(ラーニングデザイナー、コンサルタント)を持つ。また全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)認定Personal Fitness Trainer(PFT)、Revolution Training System Specialist(RTS)資格を持つ。 30年以上にわたりフィットネスだけでなくニュートリションを含めたあらゆる分野のトレーニングプログラム開発に携わる。活動の原点には、教わる人たちは一人ひとり学習への理解度は異なるといったB・S・ブルーム(Bloom)の学習理論mastery learning(完全個別学習)がある。この理論をフィジカルトレーニングのパーソナライズ化へと再構築し、パーソナルトレーニングの必要性を啓蒙している。 現在は各種プログラム開発と共に、パーソナルトレーナー石原サンチェス陽一率いる『Team SANCHEZ』に所属しフィジカルデザイナーとしてトレーナー活動に従事。またその傍らマラソン、ボクシング、ボディメイク大会に出場。フルマラソン走破を皮切りに、おやじファイトボクシングフェザー級出場(1戦1勝1KO)、2017ベストボディジャパンゴールドクラス東京オープン5位入賞、2018東京大会ファイナリストとなる。自らの実践を通じてフィットネスの素晴らしさ、ニュートリションの必要性を発信している。 Facebook: https://www.facebook.com/kazuya.mori.543