クレアチンは筋力、パワー、引き締まった筋組織への効果が科学的に証明されているので、アスリートや重量挙げ愛好家にとって必要不可欠な栄養素と言えるでしょう。
クレアチンとは体内で自然に生成される窒素含有有機化合物です。 大部分は肝臓で生成されますが、腎臓や膵臓でも少量が作れられます。
クレアチンはアミノ酸のグリシン、アルギニン、メチオニンを使って、1日に1-2gという割合で体内で生成されています。 クレアチンはそのうち約98%が骨格筋内に貯蔵される一方、残る2%は心臓、脳、睾丸に蓄えられます。
クレアチンは食事によって得ることもでき、平均的な人は1日に約1gを魚や肉といった食品から摂取しています。 クレアチンの食事による供給が増えることで、クレアチンリン酸 (CP) の筋肉内貯蔵量の増加に役立ちます。これがとても重要なことになり得るのです。
クレアチンはどう作用するか?
CPの形で存在するクレアチンは、短期的な高強度運動でのエナジー生産において極めて重要な役割をもっています。 科学的な話について少しだけ触れておきましょう。 CPは、アデノシン二リン酸 (ADP) を再リン酸化することでアデノシン三リン酸 (ATP) を形成するための基質として使われます。 要するに、もしも体内で自然に存在するCPを通して、もしくはクレアチンの補給によって、ADPからATPへの変換がより素早く効率的に行われたならば、激しい運動で利用できるエナジーもより大きくなるはずです。
理論上、クレアチンの供給によって筋肉内のCP貯蔵量を増加させる、または「満タン」にすることで、パフォーマンス強化をもたらすホスファゲン/非乳酸性エナジー機構への燃料補給ができるはずです。
運動パフォーマンスに対するクレアチンの効果や効能
国際スポーツ栄養学会が発表した見解 (Bufordら、2007年) によると、クレアチンは現在、高強度運動の能力と筋肉量を向上させる目的でトレーニング中のアスリートが使用できるもののうち、最も効果的な心身機能を向上させる栄養サプリメントであるとされています。
現在、クレアチンサプリメントの運動に対する効果を研究した査読済み論文は約500本あります。
これらの論文のうち約70%は、インターバルトレーニング、短距離走、筋力とパワーのエクササイズを含む高強度運動のパフォーマンスを向上させる効果がクレアチン補給にはあると結論付けています。 比較臨床研究からは、クレアチン補給によって約30秒間の反復スプリント中にスプリントの平均タイムと耐疲労性の向上が見られるという結果が示されています。 しかしながら、1回限りのスプリントに関してはそれほど決定的な結果では得られていません。
90秒超というさらに長期的な運動に対する効果も決定的なものではありませんが、体内での有酸素性エナジー機構に対する影響は小さいため驚くことではありません。 短期的なクレアチン摂取 (つまり、通常は1週間の使用よりも少ない場合) では、短距離自転車競走でのパワーに加えて、ベンチプレスやバックスクワット中に行われる仕事量と反復回数の総量といった抵抗運動について、パフォーマンスを強化する効果が見られます。
クレアチン補給と抵抗トレーニングを組み合わせた長期的な適用 (つまり、通常は4週間以上) では、以下の項目が向上することが実証されています。
✓筋力とパワー
✓短距離走のパフォーマンス
✓力の立ち上がり率
✓筋肉サイズ
✓除脂肪体重。
なので重量挙げや短距離走、断続的な性質のスポーツを行うアスリートたちにとっては好都合ですが、マラソンで分数を縮めることはおそらくできないでしょう。
筋肉量に対するクレアチンの効果
クレアチンを摂る最高のタイミングはトレーニングの前か、それとも後か?
多くの人はある特定の目的のためにトレーニングを行いますが、そうでない人もいます。 筋力、パワー、総合的なスポーツ能力の向上を考えている場合も十分あり得ますし、除脂肪体重、筋肉サイズ、理想的な体型の獲得が主な目標ということもよくあります。
幸いにも、長期的なクレアチン補給はこのような場合でも質を高めることが分かっています。特に、数カ月に及ぶハードトレーニングを通して、研究の被験者は偽薬を摂取した被験者と比べると、最大で2倍という除脂肪体重の増加を経験しています。 実質的に、これら様々な研究における被験者は、クレアチン未使用の被験者と比較すると「クレアチンの使用中に筋肉量の増加が2倍」になったのです。
ある研究では、12週間に及ぶクレアチン補給と組み合せた抵抗トレーニングプログラムでは筋繊維の直径がI型筋線維でもII型筋線維でも35%増加しましたが、偽薬グループでは6~15%にとどまりました (Volekら、1999年)。
クレアチン補給による除脂肪筋肉量の増加は、より高強度でより長い抵抗運動を実行する能力が向上した結果と見られています。 クレアチンは筋細胞の膨張をもたらす可能性もあります。 近年、細胞腫脹は筋肉肥大に対する強力な刺激となることが分かっています。