身体活動のエネルギーとして、体を構成する栄養素がうまく働くために、機械の潤滑油のような働きをしているビタミン。ビタミンの必要量はごく少量ですが体内で合成することはできず、食物やサプリメントなどから摂取しなければなりません。
今回は、ビタミンの中でも欠乏すると貧血などの重大な症状を引き起こすビタミンB12について解説していきます。
ビタミンB12とは?
ビタミンB12は水溶性ビタミンであるビタミンB群の1つで、神経や血液細胞を健康に保ち、遺伝物質のDNAの生成を助ける栄養素です。食品のタンパク質から胃酸によって分離されると、十二指腸に移動した後、胃の中で作られた内因子と結合し、回腸末端(小腸の終末部)で血液内に吸収されます(1)。
ビタミンB12の効果・効能
ビタミンB12は、葉酸との協力により様々な働きをします。
1つ目は赤血球の中にあるヘモグロビンの生成を助ける働きです。ビタミンB12が不足していると、赤血球のもとになる赤芽球が異常に巨大化し、赤血球が成熟する前に死滅してしまう巨赤芽球性貧血を発症します。同様に、DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の生合成を促進し、細胞の生産や再生も助けるため、体の発育に重要です。また、神経系への影響として、肩こりや腰痛、しびれの原因となる末梢神経の損傷を治す効果もあり、治療薬としてビタミンB12が処方されることもあります(2)。
その他の効能についても、さまざまな研究が行われています。ビタミンB12の十分な摂取は心臓病や脳卒中、アルツハイマー型認知症のリスクを増大させる動脈硬化の原因、ホモシステインの濃度を低下させる働きがあり、それらの疾患に対するリスク軽減効果が期待されています(3)。
1日に必要なビタミンB12の摂取量
1日に摂取したいビタミンB12の摂取基準は、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」(厚生労働省)に記載されています(4)。1歳~17歳までは、年齢が上がるごとに増えていきますが、18歳以上になると2.4μgと年齢や男女関係なく一定になります。また過剰に摂取したものは、胃で生成された内因子と結合することはなく、排出されてしまうので問題ありません。
ビタミンB12はどんな食品に多く含まれるのか?
ビタミンB12は、野菜などの植物性食品(海苔は除く)には含まれず、以下にあげるような動物性の食品に多く含まれます。
- レバーおよび二枚貝(以下100g中)50~100μg
- 魚10~20μg、食肉5~10μg、卵5~10μg、牛乳およびその他の乳製品
最近では、ビタミンB12が添加されたシリアルなどの栄養強化食品も開発され、動物性食品を摂れない場合でも、このような栄養強化食品やサプリメントなどから摂取することが可能となってきています(5、6)。なお、ビタミンB12は光や空気で酸化されやすく、食材を保存する際は密閉する必要があり注意が必要です(7)。
ビタミンB12が不足した場合の影響
ビタミンB12が不足すると前述の巨赤芽球性貧血を発症します。そのため疲労感、体力低下、息切れやめまい、食欲不振、体重減少など様々な自覚症状が現れます。
また、神経症状についても、手足のしびれや軽い痛みから、重篤化すると平衡感覚障害やうつ病、認知症といった症状に悩まされることもあります。神経は全身を巡っているため、口や舌に痛みがでたり、その他の部分の痛みにつながったりもします。
なぜB12が不足するのか?
ビタミンB12が不足する原因として、摂取不足と吸収障害があげられます。
動物性タンパク質を摂取しない菜食主義者(ベジタリアン)、完全菜食主義者(ビーガン)の方は、ビタミンB12の摂取が不足し欠乏症状をきたしやすく、サプリメントなどで補給が必要になります。マイプロテインにはビタミンB12に特化したもの、ビタミンB全般を摂取できるものなどサプリの種類が多く、ニーズに合わせて選ぶことが可能です。
また、タンパク質からビタミンB12を分離する胃液が出にくい方(胃の手術後、慢性胃炎、高齢者など)ビタミンと結合する内因子が欠乏状態にある方(胃手術後、自己免疫性胃炎など)、ビタミンを血中に吸収する回腸末端(小腸の最後の部分)が障害されていたり、手術で切除されている方などは食べ物からの吸収が難しくなり、医療機関でビタミンB12の定期的な注射が必要となることもあります。
なお、体内にはビタミンB12の備蓄がミリグラム単位で存在するため、ビタミンB12が摂取できなくなっても、欠乏症に至るまでには3~5年間かかります。
まとめ
ビタミンB12はバランスの良い食事をしている方、特にワークアウトを行い卵、肉、魚など動物性タンパク質を意識的に摂取している方なら不足することは稀ですが、動物性タンパク質をとらない菜食主義者にとっては必須の栄養素です(8)。不足することで貧血、神経障害などを起こす可能性がありますので、必要に応じ適切にサプリメントで補給するよう心がけましょう。