懸垂は、日々のトレーニングに取り入れたい非常に優れた多関節種目です。筋力を高めるのに最適ですが、特に始めたばかりのころはコツを掴むのが難しい運動でもあります。
自分の体重を支えて自在に操る力は素晴らしい能力ですが、バーにぶら下がってもまだ身体を持ち上げられない段階では、遠い道のりに感じられるかもしれません。自重と戦う種目であるため、懸垂自体の負荷を直接下げる方法はそれほど多くありません。しかし、段階的に筋力を養い、目標へと到達するための方法はいくつか存在します。
- ワイドグリップ懸垂で鍛えられる筋肉
- ワイドグリップとナローグリップの違い
- ワイドグリップ懸垂に必要な筋力を養う方法
- ワイドグリップ懸垂の正しいやり方
- ワイドグリップ懸垂の代わりになる種目
- ワイドグリップ懸垂に関するよくある質問
ワイドグリップ懸垂で鍛えられる筋肉
懸垂で主に使われる筋肉は広背筋です。これは腕から背中の中央部にかけて広がる大きな筋肉で、肩から腰にかけて逆三角形の広がりをもたらします。
広背筋は、肘を脇腹へと引き下ろす動作において欠かせない筋肉です。また、肘を曲げて腕を引きつけるために上腕二頭筋も使われます。
身体を鉄棒に向けて引き上げる主働筋に加えて、動作を補助・制御するための筋肉も働きます。背中では菱形筋、大円筋、三角筋後部が関与し、前腕の筋肉群はバーを握り続け、肘を曲げる動作を助けます。
さらに、身体の揺れを抑えて動作を安定させる体幹や臀筋の働きも見逃せません。
ワイドグリップとナローグリップの違い
懸垂には数多くのバリエーションがありますが、最も一般的なのは直線状のバーを広い手幅(ワイドグリップ)または狭い手幅(ナローグリップ)で握るやり方です。また、手のひらを向かい合わせにして握るパラレルグリップが可能なバーを目にすることもあります。
手幅を広げるほど背中、特に広背筋への関与が強まり、筋肉により大きな負荷がかかります。
一方、手幅を狭くすると、背中の大円筋や菱形筋に加えて、上腕二頭筋をより強く使う感覚が得られるはずです。
手幅によって難易度に違いを感じることもあります。これは、人それぞれの得意な筋肉や骨格の構造によるものです。
例えば、手幅を広げすぎると肩関節にかかるテコの力によって引き上げるのが極めて難しくなります。逆に手幅を狭くしすぎると、身体を引き上げる移動距離が長くなり、別の難しさが生じます。
このようにそれぞれ特徴が異なるため、両方を日々の練習に取り入れ、多角的に筋力を鍛えていくのが理想的です。
ワイドグリップ懸垂に必要な筋力を養う方法
ワイドグリップ・ラットプルダウン
ワイドグリップ懸垂がまだ難しい場合は、ラットプルダウンから始めるのが最適です。懸垂と全く同じ動作軌道を描き、同じ筋肉を鍛えることができます。
まずは肩幅よりも広い手幅でバーを握り、基礎的な動作を身につけましょう。1週目は12回を3セット行い、翌週以降は反復回数を減らしながら徐々に重量を増やしていきます。
自分の体重に近い重量を引けるようになったら、鉄棒での懸垂に移行しましょう。
ナローグリップ懸垂
広い手幅での動作が難しい場合は、手幅を狭くした状態から始めると感覚を掴みやすいでしょう。手幅を狭めて順手で握るか、手のひらを向かい合わせるパラレルグリップを用いることで、肩に力が入りやすい体勢を作ることができます。
あるいは、手のひらを自分に向けた逆手で握ることで、肘を身体の近くに通しながら強い力を発揮できる可動域で動作を行えます。顎をバーの上に持ち上げることにとらわれず、肘を脇腹へと引き下ろす意識を持ちましょう。
ネガティブ懸垂
この種目は、懸垂の身体を下ろす局面(エキセントリック収縮)のみに集中して行う練習法です。
筋肉は身体を下ろす局面のほうが大きな力を発揮しやすいため、この局面だけを重点的に鍛えることで大きな向上が得られます。
鉄棒の下に台やベンチを置き、その上に立ってジャンプしながら懸垂の頂点(身体を引き上げた位置)まで上がります。そこで1秒間静止した後、6秒ほどかけてゆっくりと身体を下ろしていきます。これを4回、3セット繰り返してください。
バンド補助付き懸垂
トレーニング用のゴムバンド(レジスタンスバンド)を活用すれば、動作の中で最も負荷が高い初動を補助し、無理なく練習することができます。
腕を完全に伸ばしてぶら下がった状態から身体を持ち上げるのは非常に難しく感じられるものですが、ゴムバンドを使えばパチンコのように上方へと押し上げて身体の引き上げを助けてくれます。
身体が上がるにつれてバンドの縮みとともに補助力は弱くなりますが、最も苦しい初動を乗り切るのに大いに役立ちます。
ワイドグリップ懸垂の正しいやり方
懸垂の準備はとても単純です。必要な器具は、ぶら下がることができ、頭をぶつけないだけの十分な高さがある鉄棒だけです。
- 肩幅よりも少し広めの手幅で、順手(手のひらを前方に向ける)でバーを握ります。
- 肩甲骨を背中の後ろのポケットにしまい込むような意識で、後方かつ下方へと引き下げます。
- おへそをお腹の奥に引き込むように体幹を締め、お尻に力を入れます。
- 肘を脇腹に向けて引き下ろすようにしながら、身体をバーへ向かって引き上げ始めます。
- 胸をバーに近づけるように引き上げ、背中の筋肉を完全に収縮させます。
- 勢いをつけずに身体を制御しながら元のぶら下がった姿勢へと戻し、次の動作に入ります。
自重では物足りなくなった場合は、加重ベルトを使って重りを吊るし、負荷を高めることができます。
ワイドグリップ懸垂の代わりになる種目
近くに鉄棒がない場合や、代替種目・補助種目を取り入れたい場合は、いくつかの派生種目を練習メニューに加えましょう。これらを週に数回行い、背中の種目を合計で週20セット程度こなすことを目指します。
ワンハンド・ダンベルローイング: ベンチに片膝と片手を乗せて身体を支え、もう一方の足を床につけます。ダンベルを片手で持ち、ノコギリを引くような動作で肘を脇腹へと引き上げます。
吊り輪懸垂: 吊り輪が使える環境であれば、非常に効果的な選択肢です。吊り輪は可動域が広く、肩関節の自然な回旋が可能になるため、関節の強化にもつながります。
ベントオーバーローイング: バーベルを用い、前傾姿勢をとって行う種目で、懸垂と同様の筋肉を鍛えられます。逆手でバーを握ることで、広背筋への刺激をさらに高めることも可能です。
ワイドグリップ懸垂に関するよくある質問
ワイドグリップ懸垂ではどの筋肉が鍛えられますか?
主に鍛えられるのは広背筋と上腕二頭筋です。補助筋としては、菱形筋、大円筋、三角筋後部、前腕筋群が動員され、動作を安定させるために体幹や臀筋も働きます。
初心者がワイドグリップ懸垂を行うための筋力をつけるにはどうすればよいですか?
まだワイドグリップ懸垂ができない場合は、手幅を広く取ったラットプルダウン、手幅を狭くした懸垂やパラレルグリップでの懸垂、下ろす局面のみを行うネガティブ懸垂、ゴムバンドで負荷を補助した懸垂などで基礎筋力を養うと効果的です。
ワイドグリップとナローグリップの懸垂にはどのような違いがありますか?
手幅を広くすると、広背筋を中心とした背中の外側に強い負荷がかかります。手幅を狭くすると、負荷の一部が上腕二頭筋や大円筋、菱形筋へと分散されます。
ワイドグリップ懸垂の代わりにできるおすすめの種目は何ですか?
効果的な代替種目や補助種目として、ワンハンド・ダンベルローイング、吊り輪懸垂、バーベルロウなどが挙げられます。
ワイドグリップ懸垂は何回・何セット行うべきですか?
筋力向上を目的とするなら、3〜5回で限界を迎える強度(必要に応じて加重ベルトを使用)で3〜5セット行いましょう。筋力の基礎づくりが目的の場合は、補助種目を取り入れつつ12回程度を2〜3セット行うのが目安です。
ワイドグリップ懸垂は通常の懸垂よりも優れていますか?
手幅を広げることで背中の広がりを強調しやすくなりますが、一概に通常の懸垂より「優れている」とは言えません。難易度が高くなる分、反復できる回数が減る可能性があります。肩幅程度の通常の懸垂のほうが、筋肉に負荷がかかり続ける時間を長く維持しやすい利点もあります。
手幅を広げると懸垂は難しくなりますか?
腕の長さや肩のテコの作用、筋肉のつき方によって個人差があります。ただし、手幅を極端に広げると肩関節にかかる負担が増し、力学的に引きにくくなるため、肩幅程度の懸垂よりも難しく感じる人が多いのが一般的です。
懸垂をすると背中が広くなりますか?
はい。広背筋や大円筋を刺激することで、背中上部の筋肥大が促されます。また、肩甲骨を後方に引き寄せる菱形筋も鍛えられるため、姿勢が整い、視覚的にも背中がより広く見えるようになります。
まとめ
ワイドグリップ懸垂は難度の高い種目ですが、定期的に練習を重ねれば必ずコツを掴むことができます。疲労が溜まっていない運動の前半に取り組み、様々なバリエーションや補助種目も織り交ぜながら、全身の筋力を総合的に高めていきましょう。